利用許諾条件の範囲を超えた利用 - 「頭がよくなるおりがみあそび」事件
東京地判平成19年11月16日(裁判所HP)
原告:X(イラストレーター)
被告:Y1・Y2(いずれも出版社)
Y1は「頭がよくなるおりがみあそび」という書籍を発行するために、Xにイラスト製作を依頼しました。Xはこれを受けてイラスト57点を交付しました。
依頼メールでは「プロセスカット〔注:折り紙の折り方の説明部分に付されるイラスト〕、遊び方のイラストをお願いし」ます、とされていたので、Xとしてはあくまでも書籍内のカットとして利用されるのだろうと思っていたのですが、ふたを開けてみるとY1はXのイラストの一部を表紙イラストとして利用。
その上、色を替え(オリジナルでは二色だったのが多色に)、一部についてはサイズの拡大もされていました。
そこでXが、表紙への利用は許諾していないとして複製権侵害、色とサイズの改変は同一性保持権侵害、さらにXの氏名が書籍に表示されていないとして氏名表示権侵害を主張し、計67万円の損害賠償を請求しました。
結論として裁判所がどう判断したかというと、損害額の点を除き全面的にXの主張を認めて、33万円の限度で請求を認容しました。
つまり、複製権、同一性保持権、氏名表示権の侵害がいずれも肯定されたわけです。
Yらに弁護士がついていないこともあって、法解釈的に興味深い主張が戦わされることもなく、わりと簡単に結論が導かれています。
契約解釈の点で評価が分かれる余地はあるでしょうし、氏名不表示の特約があった可能性はないのかとか、20条2項4号でもっといろいろ言っておけばいいのにとか思わないでもないのですが、当事者が争ってないんだから仕方がありません。
ありがちな事例(同種の事案は、古くは東京地判昭和48年7月27日無体集5巻2号243頁(レジャー施設パンフレット事件)、最近では東京高判平成11年9月21日判時1702号140頁(恐竜イラスト事件)など。)についての妥当な解決(Xにとっては損害額の点で不満でしょうが。)を示した事例判決ですね、という感想。
ただ一点だけ残念なのは、契約解釈(そもそも契約の成立それ自体についても。意思実現によって成立したんでしょうか?)についてもっと真剣に争われていたならば、利用許諾条件の範囲を超えた利用は単なる債務不履行に止まるのか、それとも著作権侵害をも構成するのかという論点(中山330頁、作花(3版)413頁など)についての議論に何らかの示唆を与えることができたのではないか、という点ですけれど、まあ、書籍内部でカットとして利用するか、書籍の「顔」である表紙に利用するかは質的にも全く異なりますから、結論としては著作権侵害としたのは妥当なのでしょうね。
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