観音像の頭部をすげ替えるのは同一性保持権侵害!
非常に面白い判決が出ました。東京地判平成21年5月28日。
記事を読む限り、次のような事案のようです。
原告Xの主張によれば、彫刻家であるXとその兄A(その後死亡)は、Y1寺の依頼を受けて、共同で本件観音像を創作しました。
その後本件観音像はY1寺に所蔵されるようになりましたが、Y1寺の住職は「観音像を見上げるとにらみつけるような顔で違和感がある」という理由で、Aの弟子のY2に本件観音像の頭部をすげ替えるように依頼し、Y2はこれを受けて新しい頭部を制作し、すげ替えました。
Aは死亡していたので、Xが単独で、Yらに対し、原状回復と損害賠償を求めて提訴したのが本件です。
裁判所は、Xが共同著作者であるという立証がないことから、Xは著作者ではないとしました。他方、Aは著作者だと認定されたようです(争いがなかったのでしょう。)。
で、Aが死亡していますから、このすげ替え行為は著作権法60条に違反する行為に当たります(Aの死亡の方が後だったらちょっと違ってくるけど。)。
そういうわけで、遺族であるXが116条1項に基づいて原状回復を請求できるとしたようです。
原作品の毀損行為が同一性保持権侵害になるか、その際、見た目が好ましくないことが改変を正当化する事情になるか(20条2項4号や60条ただし書)、115条で原状回復を請求できるか、116条2項の順序との関係(弟は一番最後のはず)、損害賠償責任の有無、実際に改変を行ったのはY2なのにY1が何らかの責任を負うのは何故か、など、さまざまな論点が絡み合う訴訟であるという点で興味深いのはもとより、そもそも「原作品を改変したのが違法だから元に戻せ」という請求の趣旨自体が珍しく、非常に面白い事例だなあという印象です。
同一性保持権や60条に関する重要な裁判例となることでしょう。
参考:原作品の毀損行為が問題となった先例
・東京地判平成8年2月23日(やっぱりブスが好き事件)
・東京地判平成19年12月12日(放電焼結装置事件)
・東京地決平成15年6月11日(ノグチルーム事件)
(・最一判平成17年7月14日(船橋市西図書館蔵書廃棄事件))
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